第51回 塩尻美術会展 総評
平成29/3/19
小松正弘
今回は特に洋画のレベルが全体に上がってきていて、審査をするのに大変苦労しました。またいろんな傾向の絵が出てきていることも大変よかったです。各自に自分の絵のスタイルが備わってきていて、それがだんだん確立されてきているように思います。その中で栄えある塩尻美術会賞に輝いた保科正子さんの「未来への視線」は、子を抱え途方にくれながらも未来を見据え、何とか生き抜かなくてはならないという母の強い意志と、不安を感じている子供たちの表情がとてもよく表現されていて、作者の意図がよく伝わる秀作だと思います。50号という大きな画面に上半身に絞って描いたことで、各自の表情がよくわかることで作者の想いがしっかり伝わってくるのだと思います。その他の作品では、小岩井清子さんの「そこにある物」はあまり大きくはない作品ですが、色がきれいでマチエールが面白く、なんとなく謎めいたものを感じるところがとてもおもしろい作品だと思います。
賞にはならなかった絵でよかった作品は、竹川時子さんの「釣人」、海の表現が幻想的でとてもよかったです。また、中條とみ子さんの「山清路」は構図がよく、いろいろな緑色が使われていてとてもよかったです。
次回は6月の芸術祭での発表になります。そこに向けて更なる躍進を期待します。